SRF-JRMC木工工場(カーペンターショップ):伝統と創意工夫を携えた技能集団

文・写真:礒部良、FLEACT横須賀広報課

港に停泊する艦船がかすんで見える海を見渡すと、船が鋼ではなく、木材で建造されていた時代が昨日のことのように思い出されるだろう。

米海軍では、船匠助手を専門職とする職位が1947年まで存続していた。『ブルージャケッツ・マニュアル』(1917年、第5版)によれば、彼らの責務は艦船の換気や、防水制御・管理、塗装や排水などに及んだという。しかしながら、艦船の木製部品が減少するにつれ、そうした業務は少なくなっていった。木工の仕事は海上自衛隊では保持されているものの、米海軍での船匠助手の職位は廃止され、米海軍ではダメージ・コントロールマンの職位に含まれることになった。

海軍での木製艦船は過去の物となった今でも、横須賀艦船修理廠および日本地区造修統括本部(SRF-JRMC)の木工工場はいまだ現役である。広大なスペースに入ると、未来と現在が融合した、彼らの創意工夫を肌で感じることができる。

「時代が変わるにつれて、我々もそれに合わせる必要があります」というのは角田宗範木工工場長だ。「それと同時に次世代のために、木工技術者としても技術を保持する必要があります。」

伝統的な技術は実地の経験のみによってしか学べません、と角田さんは付け加えた。「技能訓練生や新しい従業員などを受け入れて、大工としての訓練を行います」と角田さんは話す。「訓練室では2年間の訓練を行い、さらに2年間、実地で訓練をします。現在は大体、40名近くの大工が工場に在籍しています。実際に仕事をしながら訓練をし、さまざまな要求事項に応えています。」

訓練室では、一人の新規の研修生が戸棚を製作していた。「他の部署からの注文で作っています」と大工(造船工)の深瀬健人さんは話した。「この工場に来てから2年になります。このような注文がたくさんありますが、完成までは3日かかります。」

「大工の勉強はまったくの最初から始めました」と言うのは同じく大工(造船工)の関添勇人さん。「毎日が新しいことの勉強です。でもとてもやりがいがあります。」

角田さんが訓練室を案内してくれた。この部屋では、鋸(のこぎり)や、斧(おの)、鉈(なた)、鑿(のみ)、金づちや鉋(かんな)など、伝統的な日本の大工道具がそろっている。

「私たちはこうした道具を丁寧に手入れします」と角田さんは小さな鉋を手にして言った。「道具を自分たちで作ることもあります。」

2016年5月16日、艦船修理廠および日本地区造修統括本部(SRF-JRMC)の木工工場の工員らが1号ケーソンを1号ドックに係留した。木工工場の仕事は木材を扱うのみでなく、ドッキングに関する幅広い仕事を網羅している。(写真:礒部良 FLEACT横須賀広報課)

2016年5月16日、艦船修理廠および日本地区造修統括本部(SRF-JRMC)の木工工場の工員らが1号ケーソンを1号ドックに係留した。木工工場の仕事は木材を扱うのみでなく、ドッキングに関する幅広い仕事を網羅している。(写真:礒部良、FLEACT横須賀広報課)

角田さんによれば、日本の鋸は西洋の物とは異なるという。「木材を切るとき、日本の鋸は引くようにできていますが、ほかのものは逆になっています」と角田さんは話した。

日本の鋸は、しばしば歯が交互に違う方向を向いており、それは歯振(あさり)と呼ばれている。こうした独特の形をしていることにより、前後に動かす際、歯と木材の摩擦が軽減され、出るおがくずも少ない。

木工工場を見渡して、数多くの工具や携わっているプロジェクトをながめると、SRF-JRMCで現代の木工たちはどんな仕事をしているのか不思議に思うかもしれない。意外に思うかもしれないが、部隊全体のなかでも―きわめて正確さを要する―最も大切な仕事の一つを行っているのも彼らだ。

そうした仕事には、木製のキールブロック(盤木)とサイドブロック(腹盤木)の設置がある。この作業はいわずもがな、完璧かつ正確に行われる必要がある。盤木はドライドック(船渠)で船体を支えるものだ。ドライドックの底には木製の盤木と腹盤木がコンクリート製の台座の上に据えられ、船体に正確に接するようにできている。入渠時には、ドライドックは水で満たされ、艦船がドックに入る。それから水がドックからゆっくりと排出され、艦船はブロックに着床する。

入渠前、木工工場の人たちはブロックの設置準備に追われる。ドライドックの中に何十もの盤木や腹盤木を設置していく

ドライドックの盤木や腹盤木以外にも、木工工場の人たちは家具を作ったり、鋳造用の木製鋳型や救命ボートの点検、艦船の船体の亀裂をファイバーグラスで補修したり、デッキにゴム製のマットを敷設したり、台風接近時には小型船舶やバージを港湾に固定したりする。入渠や出渠時にはロープの操作も行う。

艦船が木製の盤木や腹盤木を支えとするように、SRF-JRMCは木工工場のサービスを支えとしている。時代の変遷に取り残される可能もなかったとはいえないなか、この工場は船匠の伝統を維持しつつ、現代の変化にも柔軟に対応した、才能ある人材を保ち続けている。

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