名所物見の旅 其の七拾弐 世界が驚いた広さ600畳の大藤棚

文・写真:河辺雄二、FLEACT横須賀広報課

CNN選出の「世界の夢の旅行先」

家へ帰るなりJRの駅のポスターを見てきた我が家の相棒が、足利の藤が見頃で素晴らしい、是非行ってみようと家族に宣言した。そこらの野山にも今が盛りと藤は咲いているし、近所の花の公園でも藤はあるだろうにと問えば、まったく次元が違うのだという。とりあえずネットで調べてみると、CNN「2014年世界の夢の旅行先」と銘打った世界9カ所のひとつに“あしかがフラワーパークの藤の木“が選ばれているではないか。他にはキリンが庭を闊歩する森の中のホテル「ケニヤ・ジラフマナー」とか美しい風景に囲まれた100年の歴史を持つ「イタリア・マティーナホテル」、「マダガスカル・バブバオの道」、「北極圏フィンランドのガラス張りの部屋から眺めるオーロラ」などが選出されている。一般旅行者にはあまり馴染みのない通好みの場所ばかりのようだが、この中に足利の大藤棚が名を連ねているとは、よくも調べたものだと驚いた。日本の中でもローカル色濃い足利とは!(失礼)

しかしCNNが選んだからにはそれなりのインパクトはあるに違いないと、出掛けてみることにした。

GW連休中は藤の最盛期

藤の花は4月から5月中旬が見頃で、藤をゴールデンウィークの呼び物としているフラワー公園も多い。そんな中でも「あしかがフラワーパーク」はこの時期“ふじのはな物語”と題して世界一の藤を謳い、国内だけでなく、CNNの件もあって世界中から旅行者を集めているようなので、たいへんな混雑が予想される。

大藤から頭上に垂れ下がる藤の花。あたりは花の香りに包まれ、“世界一”の優美な藤を来園者は驚きを持って観賞していた。

大藤から頭上に垂れ下がる藤の花。あたりは花の香りに包まれ、“世界一”の優美な藤を来園者は驚きを持って観賞していた。

開園時間を確かめると朝7時から夕方5時30分、夜の部5時30分より9時となっており、夜のライトアップは「日本夜景遺産」に認定されている。入れ替え制ではないので、昼の部から夜の部まで続けて見学することも可能である。面白いのは入園料と開園時間が季節や花の咲き具合で変動し、藤の最盛期は開園時間も長く料金も高いということであった。料金は朝6時半に花の咲き具合で決定され、料金が高い日ほど花々も満開で素晴らしく、よって来園者には料金が高いほど喜ばれるという面白い現象が起きているのだとか。

「あしかがフラワーパーク」の最寄り駅は両毛線の富田駅。横須賀線や東海道線の始発を利用して上野から小山、両毛線に乗り換えて富田と乗り継いでも、到着は8時を過ぎてしまう。乗用車利用の方が早く着けるだろうが、ゴールデンウィーク中は渋滞が気がかりである。

朝5時に横須賀を出発して、東北自動車道を北上。高速道路が混雑し始めた埼玉県内でナビにしたがって一般道へ。羽生から足利に入り、7時過ぎに目的の「あしかがフラワーパーク」に近づくと道路は大渋滞。すべての車の目的地は同じで、ノロノロと進む先には「あしかがフラワーパーク」の駐車場があった。駐車場確保に心配したが、通常の300台分の駐車場のほかに広大な農地が臨時駐車場になっており、千台を越す車が押しかけようと、対応できそうだ。駐車場所によっては入り口のゲートまで数百メートル歩くことになるが、のんびりと小川に沿って歩くのも楽しい。我々は結局8時過ぎに、正面ゲートとは反対側の西口ゲートのチケット売り場にたどり着いたのであった。

巨大な藤棚に驚愕する

西口ゲートを入ると満開のツツジと薄ピンクのシャクナゲに迎えられた。

樹齢143年の大藤から600畳もの藤棚に広がる藤の花。この光景が映画「アバター」の魂の木に例えられたという。

樹齢143年の大藤から600畳もの藤棚に広がる藤の花。この光景が映画「アバター」の魂の木に例えられたという。

そしてすぐに目に飛び込んできたのは、花が長く垂れ下がった大長藤。最長1.8メートルにまで花房が成長するという。なるほど、今まで見てきた藤とはまったく違う次元のものだと理解した。野山に咲く藤と違って、丁寧な手入れを施されてはじめて、このような観賞用の藤になるのだという。

朝9時過ぎというのに、もう既に大勢の来園者で溢れ、また多くの外国人が目につく。となりにはタイからの若者グループが、盛んにスマホのシャッターを押している。さらに進むと白藤の滝、きばな藤のトンネル、八重藤、そして世界に誇る二本の大藤棚へと続く。ここへ来て初めて、一本の藤から600畳もの広さの棚を伝って花房が垂れ下がる仕組みが理解できた。映画「アバター」の魂の木に例えられた樹齢143年の大藤から、頭上まで垂れ下がる藤の花に、来園者は皆驚きその美しさを堪能している。公園内はかしこに花の香りに包まれ、まるでアルプスのお花畑を歩いているようであった。

フラワーパーク園長は女性樹木医第一号

あしかがフラワーパークは1968年開園の「早川農園」がその前身で、都市開発で1997年に現在の場所に移転した。当時の大きさ300畳の大藤がウリであったが、この大藤の移植を引き受ける人がおらず、オーナーは4年近く探し回っていたようだ。根元径が100センチ以上もある大藤に、だれもが不可能と尻込みをしていたという。そんな中、女性樹木医第一号として話題を集めていた浜松の塚本こなみ氏が依頼を受けて現地を訪れ、この木は動く!と確信し、1994年1月、移植を引き受けた。塚本氏はさまざまなアイデアを試行錯誤の末、3年がかりで移植に成功し、1997年春の「あしかがフラワーパーク」開園に間に合わせたのであった。この成功物語はNHKドキュメンタリー「プロフェッショナル仕事の流儀」で2006年に放映され、また「ようこそ先輩」にも出演した。

塚本氏は藤の移植の二年後、赤字続きだった園の経営にもかかわり、園長となって改革を断行する。料金変動性もそのひとつで、花の少ない時期には格安料金で入園してもらい、園のレストランやギフトショップの稼働率はなるべく落とさないような工夫をし、園長就任翌年から黒字に転換。来場者を5倍に増やし、現在は年間百万人を優に超す勢いであるという。

また塚本氏は2013年「はままつフラワーパーク」の再建改革を期待されて理事長に就任し、30万人にも満たなかった来場者を77万人まで増やしている。

こうしてみると「あしかがフラワーパーク」の“世界一の藤”は塚本氏という一人の女性によって完成されたといって間違いないだろう。彼女の樹木医と経営者という両輪の活躍によって、我々は世界が認めた素晴らしい藤を観賞できる幸運に恵まれたのである。

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