2014 FIFAワールドカップ開幕

文:河辺雄二、FLEACT横須賀広報課

いよいよ4 年に一度の世界最大のスポーツの祭典、FIFAワールドカップが開催される。気になるわが日本チームの戦いや、強豪チームひしめく中で優勝チームの予想など楽しみは多い。地球の反対側となる今回のブラジル大会、試合のライブ放映は夜半から午前中となり、毎回のことながら寝不足の一ヶ月になるのは必至であろう。

各チームの戦力分析などは専門家に任せるとして、このコラムではワールドカップの歴史やこぼれ話を拾ってみたい。

優勝チームに大番狂わせはない

1930年に始まったワールドカップはいずれの大会も南米もしくはヨーロッパの国が優勝しており、またほとんどの場合開催された大陸の国が優勝している。例外として1958年スウェーデン大会と2002年日韓大会のブラジル優勝、2010年南アフリカ大会のスペイン優勝の三例がある。2002年と2010年の大会ではアジアやアフリカの国にはまだ優勝する力がなかったと考えれば、1958年のブラジルの優勝だけがアウェーの他大陸での唯一の優勝として特筆されるものである。

1966年英国大会から出版されているサーカーマガジン社のワールドカップ写真集は、大会の情報を得る数少ない資料のひとつであった。現在はワールドカップの写真集も百花繚乱の感があり、時代の趨勢を感じざるを得ない。また日本におけるテレビによる生放送は、1974年の西ドイツ対オランダの決勝戦が初めてであった。

1966年英国大会から出版されているサーカーマガジン社のワールドカップ写真集は、大会の情報を得る数少ない資料のひとつであった。現在はワールドカップの写真集も百花繚乱の感があり、時代の趨勢を感じざるを得ない。また日本におけるテレビによる生放送は、1974年の西ドイツ対オランダの決勝戦が初めてであった。

ワールドカップは決勝まで計7試合戦うことになるので、優勝するのは実力のある国に限られる。四チームによるグループリーグで例え一試合負けても、勝ち点および得失点差で二位以内ならば決勝トーナメントに進めるが、そこから四試合はPK戦を含め一試合も負けることは許されないので、幸運だけで優勝することが不可能なのは明らかである。

ワールドカップを制するのは優勝候補に挙げられた国の中から出てくるが、絶対的な大本命と騒がれたチームは案外優勝できていない。今までのワールドカップを振り返ってみると、1962年と1970年は大本命のブラジルが最初から最後まで圧倒的に強かったが、1954年の優勝候補筆頭のプスカシュ擁するハンガリー。1974年のクライフ率いるオランダ旋風。黄金のカルテットと称された中盤を持つ1982年のブラジル。フリット、ファンバステンらスター揃いの1990年のオランダなど大本命が途中で姿を消した。しかしノーマークの国が優勝することもありえず、例えば同じく4年に一度の欧州選手権で2004年にギリシャが優勝したような大番狂わせは、ワールドカップではいまだかつてない。

ジンクスめいた話として、「一年前に行われるリハーサルを兼ねたプレ大会(現在ではコンフェデレーション杯)の優勝チームは、本番では優勝できない」とか「年間最優秀選手賞(バロンドール)を獲った選手のいるチームは優勝できない」などがあり、このとおりならブラジルとポルトガルの優勝はないということになる。メッシが2013年度のバロンドールを獲れなかったことで、アルゼンチン国民はほっとしたかもしれない。

実力と経験を併せ持つ伝統あるチームはワールドカップでの戦い方を熟知しており、けっして最初から飛ばさないことが重要で、1982年のイタリアの戦いぶりはその典型的な例であった。その反対に1986年のワールドカップでアルゼンチンの名将メノッティが今大会最高のチームだと絶賛したデンマークが、最初から全力で飛ばしすぎてベスト16で終わった例がある。メノッティは、もし出場国が総当りのリーグ戦をすれば、圧倒的にデンマークが強いだろうと語っていたのが印象的であった。

最強ブラジルの意外な弱点

ワールドカップ唯一すべての大会に出場し、史上最多5度の優勝に輝くブラジルは、自他共に認めるW杯最強チームといえるが、南米の中にあっては圧倒的に強いわけではなく、南米選手権(現在のコパ・アメリカ)において15回優勝のウルグアイや14回優勝のアルゼンチンに水をあけられ、いまだ優勝8回にとどまっている。

またブラジルには4度も戦いながら、一度も勝てないチームがある。その相手とはノルウェーで、2分2敗という意外な通算成績である。1998年のW杯での対戦を見たが、ブラジルの攻撃を体を張って跳ね返し、攻撃は大型フォワードを狙って単純にロビングを放り込む繰り返しであったが、これが時間とともにブラジルを消耗させ、結果2-1の勝利となった。その前年の親善試合でもノルウェーは4-2で勝利しているので、この戦法はブラジルに有効だといえる。

世界最強を誇った「マジック・マジャール」

ワールドカップの歴史の中でも優勝にまつわる悲劇のひとつに、当時世界最強を誇ったハンガリーと西ドイツの決勝戦がある。無敵の「マジック・マジャール」と異名をとったハンガリーを決勝で破った西ドイツの戦いは“ベルンの奇跡”と呼ばれ、今でも語り継がれている。

ハンガリー代表は1938年のフランス大会で準優勝するなど、欧州では知られた強豪であった。ハンガリー代表は1950年6月から無敗記録を続け、1952年のヘルシンキ・オリンピックでは金メダルを獲得。1953年のイギリス遠征では、自国内の国際試合では一度も負けていなかったイングランド代表を6-3で破り、世界中を驚かせた。イングランドにとって英国四協会を除く国際試合において、ホームのウエンブリー競技場での初黒星を喫したのであった。翌年ワールドカップ直前の5月、ブダペストでの再戦では7-1の大差で再びイングランドを一蹴した。

1954年のワールドカップ決勝戦で奇跡の優勝を成し遂げ、まだ信じられないといった表情でジュール・リメ杯を手にする西ドイツ主将フリッツ・ワルターを祝福するハンガリーの主将プスカシュ。ワルターの後ろがFIFA会長のジュール・リメ。

1954年のワールドカップ決勝戦で奇跡の優勝を成し遂げ、まだ信じられないといった表情でジュール・リメ杯を手にする西ドイツ主将フリッツ・ワルターを祝福するハンガリーの主将プスカシュ。ワルターの後ろがFIFA会長のジュール・リメ。

1954年ワールドカップ・スイス大会は当然のごとく、ハンガリーは優勝候補筆頭に挙げられていた。しかし、したたかな西ドイツは一次リーグのハンガリー戦で主力を温存してハンガリーに負け、楽な組み合わせの準々決勝に進んだ。しかもハンガリーのエース、プスカシュに負傷を負わせたことも非難の的となった。いっぽう一位通過したハンガリーは強豪との連戦となり、ブラジルとの準々決勝ではピッチ上の殴り合いがロッカールームにまで持ち越され、ビンやスパイクを手に血みどろの殴り合いが続いて警察が出動する騒ぎとなった。ウルグアイとの準決勝も、延長まで持ち込まれたいへんな消耗を強いられた試合となった。

毎試合スイスの冷たい雨にたたられ、死闘を演じながら決勝に勝ちあがってきたハンガリーが迎えた決勝戦も土砂降りの雨であった。技巧派の、しかも疲労を残すハンガリーにとっては不利であり、西ドイツに3-2というスコアでよもやの逆転負けしてしまう。ハンガリーの選手たちは1950年から4年間負け知らずで臨んだ決勝戦で、人生で一番大事なといえる試合を落とし、栄光に名を刻むことはできなかったのである。

ハンガリー代表はワールドカップ後も再び一年以上無敗を続けるなどの戦績を残すが、1956年10月のハンガリー動乱勃発によって、海外遠征中だったプスカシュ、コチシュら主力選手たちは国外に亡命してチームは崩壊し、「マジック・マジャール」の栄光はここに終焉した。1950年からハンガリー動乱までの代表チームの成績は、トータル49勝9分3敗という驚異的なものであった。

なおハンガリーのエース、プスカシュは亡命後の1958年からレアル・マドリッドに所属し、サッカー史上最高の選手と評されるアルフレッド・ディ・ステファーノとともにレアルの黄金期を築いている。

ジュールリメ杯はいま何処?

国際サッカー連盟(FIFA)の会長を務め、ワールドカップを企画したフランス人ジュール・リメが寄贈した黄金の女神の像をワールドカップ優勝のトロフィーとし、このトロフィーは彼の功績を称えてジュール・リメ杯と呼ばれた。ジュール・リメはワールドカップを三度制した国に永久保持させると宣言し、1970年に三度目の優勝を果たしたブラジルがその栄誉に輝いた。主将カルロス・アウベルトに掲げられたジュール・リメ杯は、永久にブラジルサッカー協会が保持することになったのである。ところがこのジュール・リメ杯は1983年に盗難に遭い、像は一説には溶かされて金塊にされてしまったとか、イタリアの大富豪が秘蔵しているなどといった噂が絶えないが、いまだ真相は闇の中である。

現在のワールドカップトロフィーは2006年から使用されている三代目で、これを高く掲げるのはいったい誰になるのであろうか。7月14日の決勝がいまから楽しみである。

 

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